9年連続ミシュラン獲得の「MOTOI」が
心血を注いだつけ麺

 

---------------------------------------------------

 

千年の歴史とともに受け継がれてきた京都の食文化の中でも、フランス料理の最高峰、グランメゾンと呼ばれるのはほんのひと握りである。そこに名を連ねるのが地元のみならず全国から舌の肥えた食通たちが訪れる「MOTOI」である。 

京都らしい町並みの風情を感じながらたどり着くと、築100年の日本家屋に暖簾がかかる門構えというおよそフランス料理店とは思えぬ佇まい。ところが中へ入れば1階から2階を吹き抜けにした開放感あふれるダイニングフロアがあり、坪庭を挟んだ先にある蔵は妖艶な個室へとその姿を変え、客人たちをもてなしてくれる。その和と洋が融合した素晴らしい空間でオリジナリティあふれるフランス料理を供するのがシェフ、前田 元(もとい)さんだ。

●フランス料理への想いは一旦封印し中国料理を究める

古書店を営む両親のもとで絵本の代わりに料理本を読んでいた前田さんは子供の頃から料理好き、特にフランス料理に憧れがあった。小学校高学年に初めて食べたフランス料理、メインディッシュの「牛フィレとフォアグラのロッシーニ」の味はいまでも克明に覚えているそうだ。この時からフランス料理人になることしか考えていなかったが、最初に勤務したホテルで配属されたのは中国料理のセクション。フランス料理への想いは一旦封印し中国料理を究めていくことを決意すると、これが「瞬間的に味を決める」「火をコントロールする」など、高い技術が必要な料理なのだと知り、どんどんのめり込んでいった。気づけば京都「リーガロイヤルホテル」に3年、東京「グランドニッコー東京 台場」に7年と、中国料理すべてのポジションを経験していた。ここで前田さんは中国料理においてひと区切りと考え、いよいよ念願のフランス料理の道へ進み始めた。

●“レストランとは何かを学んだフランスでの経験

1年間、働きながらフランス語とフランス料理を学び、ホテル修業時代のシェフに紹介してもらいフランスのボーヌにあるミシュラン一つ星「ジャルダン・デランパール」へ。キャリアのある料理人だということで前菜のポジションから入ったがシェフのフランス語が聞き取れずミスを連発してしまう。そんな苦い経験もしながらいくつかの店で腕を磨いていった。帰国してからは京都「ホテルオークラ スカイレストランピトレスク」、世界最短でミシュラン三つ星を獲得した大阪「HAJIME」を経て自身の店、「MOTOI」をオープン。独立にあたり料理以外で影響を受けたのはフランス・ブルゴーニュ地方サンスにある二つ星「ラ・マドレーヌ」パトリック・ゴーティエシェフの料理に対する姿勢や上に立つ者の振る舞い、そして「HAJIME」米田 肇シェフの“レストランとは何か”という持論や経営者としての在り方だったそうだ。

原点となった「母の料理」

「MOTOI」で提供するのはこれまで経験した様々なジャンルの技術と調味料を融合させた前田さんなればこその料理。その原点は「母の料理」だと話す。「母は“出汁”を非常に大事にして、どんな料理にも出汁を取っていたので子供の頃からナチュラルでクリアな味、素材の味やうまみをしっかりと舌で覚えることができたのです。店ではエンドウ豆の皮と昆布でエンドウ豆の出汁を作りスープのベースにしたり、蕪をにぼしの出汁で含め煮にしてバターをかけながらアロゼ(肉や魚に油をかけながら焼く調理法)するのですが、出汁の香りがフワッとすることでフランス料理なのになぜか懐かしい味わいがするのです。そういう表現が私の作りたい料理の世界なのです」と、「にぼし」「あご」「ハーブ」など、和洋中、あらゆる出汁を駆使して作り出す唯一無二の味わいは前田さんの強みとなり、今回、開発した「三元湯つけ麺」の礎ともなっている。

フランス料理のシェフがなぜ「つけ麺」なのか

それにしてもフランス料理のシェフがなぜ「つけ麺」なのか疑問に思うところだろう。訊くと、実は前田さんは週に1度はラーメンを食べ歩く“ラーメン好き”であるが、自身の店ではラーメンを提供するチャンスがなく、ずっと“こんなラーメンがあったら”という理想を形にしたいという夢を持ち続けてきたそうだ。それがやっと叶ったので開発には相当に心血を注いだと言う。そのこだわりを紹介しよう。

ジャンルレスな10種類以上の出汁

まずは3つの異なるうまみを持った“出汁”に因み「三元湯」と名付けたスープだ。1つ目の出汁は「魚介」。ベースを何にするかと考えて思いついたのは、香味野菜を炒め、魚介の骨やアラを加え、白ワインと水、スパイスを入れじっくり煮詰めたフランス料理において欠かせない出汁、「フュメ・ド・ポワソン」だった。そこに昆布を加え、さらにうまみを足し、常にジャンルレスな10種類以上出汁を使って味を創り出す前田さんらしい魚介の出汁が完成した。

2つ目は「鶏」。ただ丸鷄から取るのではない。茹でた鶏を燻製にして寝かせることを何度も繰り返し、鰹節ならぬ「鶏節」を作った。それを厚めに削って魚介の出汁に加えることで濃厚なうまみにビタミンやコラーゲンまでも摂取できる、特に女性には良いこと尽くしの出汁である。

3つ目は「貝」。ムール貝を酒蒸しにして抽出したエキスのうまみ成分だけを凝縮した。酒蒸しした貝のエキスがどれほどおいしいかは、誰でも知るところであろう。


普通はひとつの料理にどれか1つ使えば十分なコクとうまみが取れる。それを3つも使うとはなんと贅沢なのだろうか。しかし、そんな夢のような出汁を作ろうと試みたものの、実際はひとつに調和させることはかなり困難であった。何度も試作して徐々にバランスが整えられ、やっと思い通りの出汁ができあがった。そこに少量の醤油で味を加え、シェリービネガーで風味をつけた。「余計なものは入れず、仕上がりをとにかくクリアにしたかった」と前田さんは語る。

もうひと口、あとひと口と、そのまま飲みほしたくなるつけ汁

次にこだわったのは“香り”だ。「三元湯」の味わいが立体的なので香りも同じように表現したいと思いついたのが中国料理でおなじみの「ねぎ油」。ねぎの青い部分を太白胡麻油でじっくり炒め、油にねぎの香りを移しねぎ油を作る。これをスープに加えてみたがなじみ過ぎてほとんど香りを感じられず、試行錯誤の上、焦がしネギとメンマ代わりのエリンギとともに別包にして香りを閉じ込め、最後にスープに加えてみたらこれが見事にイメージ通り! ひと口飲んでみると複雑妙味が胃袋から身体中に沁み渡り、あまりにおいしくて、もうひと口、あとひと口と、そのまま飲みほしたくなる衝動にかられてしまう。こうして味わいと香りが幾重にも広がる究極のつけ汁が完成した。

この麺でなければ商品化は見送っていた

スープと同じくらい重要な「麺」は1974年創業、神奈川県平塚市で麺づくり70年以上の歴史を持つ「麻生」が手がけた。もともとプロトン凍結機のユーザーであった「麻生」が、この「三元湯スープ」のために新たに開発したのはスープが良く絡む口当たりの良い「平打ち麺」である。特別に麺内部の空気を抜き喉越しを高める「真空処理」、味がまとまりコシをより強くするための「熟成処理」を行い、とても冷凍とは思えない味わいと食感に仕上がっている。
その出来栄えは、「第1回目の試作品を食べた時、レシピだけでここまで再現性が高いとは思わず、冷凍食品に対する考えがガラッと変わりました。茹であげたら水洗いして麺をしっかり締めてください。時間が経ってもおいしく味わっていただけます。この麺でなければ商品化は見送っていたと思います」と、前田さんに言わせたほど。

●前田さんの技が冴え渡る焼豚 

そしてとっておきの「焼豚」は脂に甘みがあり非常にやわらかい。イメージは角煮と言うように厚みがあるのにとろけるような食感だ。「上質な白豚を塩麹で3日間マリネしてから日本酒とみりんと砂糖で3時間ほど煮ます。醤油を加えたら真空パックにしてゆっくり味を入れていきます。醤油を入れてからは火にかけないので肉質がやわらかいまま味だけが入るのです」と、できあがるまでに5日もかけているそう。調理方法は手が込んでいるが出来上がりはシンプルの極み。おいしさの理由はかけた手間と時間にあるものだ。
それにしても塩麹を使うとは誰が予想できたであろう。「塩麹はニュートラルなうまみを引き出してくれ、抜群の保水力で肉が非常にやわらかくなります。3年ほど前からこの技法を肉料理やフォアグラ料理に使っています。私にとって塩麹は欠かせない調味料です」と、これこそ前田さんの技が冴え渡る焼豚なのである。

フランス料理のシェフ、いや前田さんが作るとこうなるのか。「つけ汁」「麺」「焼豚」、この三位一体の破壊力はつけ麺の新しい扉を開いた。麺をつけるごとにとろりとしてくるつけ汁は冷めていくことで味の変化を楽しめる。一方、焼豚はいつまでもやわらかで、エリンギはいつまでもシャキシャキだ。焦がしネギの香りも終わりはない。つけ麺の新境地、ここにあり! 舌を魅了する未知なる味をぜひご堪能あれ!

 

---------------------------------------------------

 

MOTOI 三元湯つけ麺 を含むラインナップ

 

---------------------------------------------------